小規模のマンションにおける定期総会や、株主が数える程度しかいない株主総会を開催せずに「決議があったとみなす」方法をご存じでしょうか?
感染症が蔓延する時期であれば、集団感染を避けるために総会を「みなし決議」で終わらせる、ということも手段として採択できそうです。
では、実際に「みなし決議」とはどのような仕組みなのでしょうか?
マンションにおける総会と株主総会で定められている法律は違います。
しかし、2つの法律に共通して「みなし決議」は認められています。
この法律又は規約により集会において決議をすべき場合において、区分所有者全員の承諾があるときは、書面又は電磁的方法による決議をすることができる。ただし、電磁的方法による決議に係る区分所有者の承諾については、法務省令で定めるところによらなければならない。
取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす。
議決権を有する全員が「みなし決議」を受け入れた場合のみ、総会は開催しなくとも問題はありません。
過半数ではなく「全員」からの承諾が必要である、というところに注意する必要があります。
一般的な総会とみなし決議で、議案の賛否が発表されるまでに踏まれる手順はどのように違うのでしょうか?
参加規模の少ない総会であれば、みなし決議の方が手っ取り早く済みそうです。
しかし、人数の多い総会では事務局の業務量が逆に多くなってしまいます。
たとえば承諾を得るために紙を配布し、その紙を全員から回収するには労力と時間の多くが費やされます。
また、重要な議案が盛り込まれているとしたら「みなし決議ではなくしっかりと話し合うべきだ」という声も上がりやすくなることでしょう。
では重要な議案をテレワークのようにWeb会議システムで議論するのはどうでしょうか?
この場合は実際に総会を開催したことになりますので「決議をしたとみなす」こととは話が変わってきます。
なぜなら、話し合いの末に「考えが変わったからやっぱり賛成にする」という人も一定数が見込まれ、この場合は「総会としての本質的な話し合いが機能している」と考えられるからです。
端的に言えばWeb会議システムであれ、総会はオンライン上で開催されたと言えます。
このことからもWeb会議やオンライン総会は「みなし決議」ではない、と考えられます。
これに関連して、議決権の行使をどのタイミングで行うのか、ということも考慮する必要があります。
◆経産省が策定する新時代の株主総会にはe投票が必要不可欠
重要な議案をみなし決議することが困難になってくるように、類似して困難なケースは多々あります。
ワンルームなど投資向けマンションのように区分所有者が住んでいない場合、みなし決議を行うために承諾を得るだけでも一苦労でしょう。
あるいはマンションに住んでいる人であれば、感覚的に分かることかと思います。
「頑固で否定的な人」が近隣住民に一人でも思い当たるようであれば、みなし決議を行うことは不可能でしょう。
もちろん、電話のような言伝や記録に残らない承諾による「みなし決議」は無効です。
まして、ある程度の規模が見込まれる株主総会では郵送やメールなど送ったところで全ての株主が返答を返してくれるでしょうか?
このことに鑑みても、みなし決議は有効な手段とは言えません。
みなし決議と勘違いされやすいところで、総会開催における電磁的方法は「全員」から承諾を得なくても導入できることはご存じでしょうか?
みなし決議における電磁的方法は書面同様に「全員」からの承諾が必要です。
しかし、オンライン総会の開催はみなし決議よりもずっと簡単です。
規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
e-Gov / 建物の区分所有等に関する法律 第31条 / 2017.4.1施行
前三項の規定にかかわらず、第百九条第二項の規定による定款の定めについての定款の変更(当該定款の定めを廃止するものを除く。)を行う株主総会の決議は、総株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、総株主の議決権の四分の三(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。
e-Gov / 会社法 第309条3項 / 2017.4.1施行
規約や定款を確認し、もしも電磁的方法に関する記載があればすぐにでもWeb会議システムと電子投票システムを導入することができます。
電磁的方法に関する記載がない場合においても、四分の三以上が「電磁的方法による決議や総会の開催」に賛成であれば規約導入が可能です。
「みなし決議に反対する頑固な人を説得する」ことと「e投票を導入する」ことは、果たしてどちらが簡単だと思いますか?
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