はじめに
地方自治体の公職選挙に匹敵する投票者数を有する団体の選挙・総会では、電子投票を実行する上での綿密な準備が必要となります。これは、システムの開発運営側のみならず、事務局であるお客様にも重要な作業となります。「e投票」では具体的にどのような準備が行われているのか、いくつかのポイントに絞ってご説明します。
大規模及び超大規模な選挙・総会の定義
「e投票」が用意しているほとんどのシリーズの中では、投票者数が5,000名を超える場合、弊社では大規模ユーザーと位置づけ、プライベートクラウドを利用するカスタマイズ版のご利用をお願いしています。 これは、サーバーやデータベース、プログラム、メモリーなどを論理的に専用領域に置く事により、投票者が集中しても性能を担保する目的と、大規模ユーザーならではの運用に合わせたプログラムのカスタマイズを可能にする目的があります。 また、論理的な領域を確保する事により障害発生時の原因究明をしやすくし対応の迅速化を図ります。 これは、標準クラウド版をご利用になっている多くのお客様への性能を担保することにつながります。 弊社では投票者が5,000名以上の場合、大規模と定義していますが、5万~数十万名規模の場合を超大規模と定義しています。 超大規模組織の選挙・総会では、一般的な設計準備作業に加え、負荷テストの位置づけが重要になります。 それでは、大規模・超大規模な選挙・総会における準備と対応について、どのような事が行われるのかを具体的にご説明します。
大規模及び超大規模な選挙・総会向け電子投票システムの開発
①業務要件の確認~カスタマイズ仕様書の提示
「e投票」は、様々な業界や組織形態の選挙・総会に対応してきました。 膨大な数の選挙と総会を実行しご意見を反映してきたシステムですので、ほとんどのお客様が各シリーズに分かれた標準クラウド版を過不足なく運用されています。 つまり、小規模~中規模のお客様では、各シリーズの標準クラウド版を上手にご利用いただくことでコストを抑えながら、とても便利に「e投票」をお使いいただくことが可能ということになります。 しかし、大規模及び超大規模のお客様では、わずかな業務フローの違いによる手作業の発生や、記録の取り方の違いなど、単独では小さな作業の違いが膨大な件数となり、事務局の作業負担となってしまいます。 その為、「e投票」標準クラウド版とのお客様の業務フローの違いを明確にする作業が開始されます。
これはあたかも、ERP導入のFit&Gap分析のような作業です。 ただし、全社的な基幹業務であるERPと異なり業務範囲が限定されている事と、弊社側に様々な業種・業態・組織から頂いた選挙・総会の経験と知識があるため、通常は2~3回程度のお打ち合わせで最終的なカスタマイズ仕様書をご提示する事が可能です。
カスタマイズの例としては、管理項目の追加、項目名称の変更、個人認証方式の追加、権限の追加、メール仕様、圧着ハガキの利用、投票画面の変更などが挙げられますが、「e投票」が持つ強固で厳格な投票エンジンに変更が加えられることはありません。
余談ですが、当社では投票システムは技術的に最新の仕組みを採用すべきではなく、確実に動作する信頼性のある仕組みを採用すべきと考えています。
②スケジュールの作成とそれに基づく開発及びテスト
カスタマイズ仕様書には、運用開始までのスケジュールが記載されます。 プログラム開発、システム運用テスト、環境構築・「e投票」システム設置、ユーザー運用テストなどの項目が、スケジュールとして線引きされます。 これらと並行して、お客様各事業所における疎通テスト(メール・投票画面ログイン等)をお客様との共同作業で行います。
③環境構築に関して
環境構築では以下のような作業が行われます。
・CPU,メモリーの増設、Webサーバー・DBサーバー、「e投票」システムの構築
・DBバックアップ設定
・Webサイトの監視設定
・管理者アカウントの発行
電子投票システムを安全にストレスなく動作させるためには、このようなインフラ技術を持つエンジニア集団が必要となります。 弊社は、ERP導入コンサルティングと、システム基盤設計(インフラ)を得意としている会社ですので、上記のような対応を行う事ができます。
④ユーザー運用テストに関して
ユーザー運用テストは、文字通りお客様による試験です。ここでシステムの最終調整が行われます。 同様に、お客様各事業所における疎通テストでは、メールの正常受信確認、画面の操作確認、圧着ハガキからの動作確認など、テストの項目は多岐にわたります。 ある特定のメールアドレスに対しての受信失敗が発生している場合など、対応策をご提示します。
⓹負荷テストに関して
大規模・超大規模の選挙・総会運営では、設計時に想定したレスポンスを実現できるかどうか、実際にシステムを厳しい条件下で動作確認させる必要があります。 これらのテストでは、現実的に想定されるアクセス集中の数倍以上での確認が行われます。 その結果、性能目標をクリアできる適切なサーバースペックを判定します。
超大規模を想定した負荷テストでは、「負荷テスト実施報告書」としてお客様と共有し、運用のシミュレーションにお役立ていただきます。
また、不測の性能劣化に備えたサーバー増強などの対応に関してご説明させていただきます。
⑥選挙・総会での支援業務
選挙・総会の期間中、「e投票」チームは以下の作業をを行い、システムの安定稼働をお手伝いします。
・投票者情報、選挙・候補者情報、メール案内文のシステム登録
・選挙ごとに投票者のID、パスワード発行
・選挙案内メール送信(送信件数が多いので分割送信します。)
・Webサーバー、データベースサーバー、「e投票」システムの保守
・データベースの日次バックアップ
・Webサイトの監視
・お問い合わせ対応
尚、一部作業はご契約内容に依存しますので、作業分担はご契約時に弊社及びお客様の作業項目としてご説明させていただきます。
まとめ
「e投票」は、多くの経験を基に各シリーズが開発され、それぞれ安全性・利便性が確保された安定稼働するシステムとして完成しています。 大規模を含むカスタマイズ版のご提供では、強固な投票エンジンに変更を加えることなく、管理項目の追加、項目名称の変更、個人認証方式の追加、権限の追加、メール仕様、圧着ハガキの利用、投票画面の変更など、お客様の要件を満たします。また、それらはプライベートクラウド上に実装され、性能を担保します。 超大規模な選挙・総会を想定したカスタマイズ版では、大規模以上に負荷テストを重視した対応を行い、本番運用時の監視が強化されます。
最後に
さて、このように、お客様と「e投票」チームが時間と労力をかけ確実に動作する環境を構築した場合でも、実際に選挙が行われないケースもあります。 立候補者が定数を超えた場合に選挙を実施するケースでは、立候補者が定数内の場合は無投票当選となりますので、準備を重ねた「e投票」カスタマイズ版は利用されない事になります。 お客様と「e投票」チームとの共同作業は、少なくとも数か月前に始められ、結果として選挙がなかった場合は、また1年後又は2年後の選挙に向けて、システムを維持管理していくことになります。
「e投票」ホームページに掲示されている利用者数が突如跳ね上がる事があれば、それはお客様と共に長期にわたって設計・開発・テストを行ってきたプライベートクラウドが、ついに日の目を見た瞬間という事になります。