平成31年度の概算要求で、在外選挙人のインターネット投票(電子投票)の調査・検証事業として3.2億円が計上されました。
この件を掘り下げてみましょう。
在外選挙人の投票
これまで、在外選挙人は以下の手続きを経て、選挙の投票が可能でした。
(1)被登録資格
年齢満18歳以上の日本国籍を持ち、豪州国内に3ヶ月以上お住まいの方。
3か月以上海外に住所を有していない場合でも登録申請は可能です。ただし、登録資格の3か月住所要件は変わらないため、申請書は大使館・総領事館が3か月要件充足時まで保管し、住所確認の手続き後登録先の市区町村選挙管理委員会に送付します。
(2)申請方法
申請者ご本人が、最寄りの大使館・総領事館で申請してください。在留届に記載されている同居家族による代理申請をご希望の方は、大使館・総領事館までご連絡下さい。
(3)申請に必要なもの
①旅券(諸事情により提示できない場合は日本国または居住国の政府・地方公共団体が交付した顔写真付身分証明書。例えば、運転免許証、外国人登録証、滞在許可証など)
②豪州国内に引き続き3か月以上居住していること、または現在居住していることを証明する書類(住宅賃貸借契約書、居住証明書、住民登録証、住所記載の電気・ガスの請求書など)
*ただし、「在留届」を大使館・総領事館に3か月以上前に提出している場合、②は不要です。
(4)投票方法
投票は、原則として在外公館内に設置される投票所で行う在外公館投票方式によって行われます。在外公館投票を実施しない公館の管轄区域内に居住している方や、在外公館からの遠隔地に居住している方の場合には、投票用紙を登録先の市区町村選挙管理委員会に直接請求する郵便投票方式による投票も可能です。
しかし、手続きが面倒なうえに投票所が少ないため、この制度は充分に機能していません。
例外事項
また、現在でも、遠洋漁業者は、FAXによる洋上投票が可能です。
【洋上投票】
総務省令で定める指定船舶内での不在者投票=船長または代理人が指定市区町村の選挙管理委員会で洋上投票送信用紙等の交付を受け、船内で投票。指定された選挙管理委員会にファックス送信する。その後、投票用紙をまとめて交付を受けた選挙管理委員会に返還(送致)する。
FAXは認められ、電子投票が認められないのは、いかにも不思議な事です。
弊害は技術的問題ではない
今回の予算は、在外選挙人が投票しやすい環境を整備するため、インターネット投票(電子投票)について調査・検証を実施するものですが、「e投票」などの電子投票はすでに民間で広く活用されており、このようなケースを実現するにあたり、さほどの開発は必要としません。
それでも、公職選挙の投票方法が、有権者の利便性を意識し始めたことは、大変な進歩だと言えるかもしれません。
今後、公職選挙の国内投票が行われる場合は、圧倒的な投票率の向上が期待できますが、それは組織票を持つ既存政党にとって必ずしもメリットにはならない為、まずは住民アンケートを選挙に匹敵する精度で行うなどの、社会実験から導入が進められると思われます。
今後の動きに注目です。