現行方式より優れるネット投票のセキュリティ
ネット投票、Web選挙、電子投票といわれるものは、投票所のボタンを押す仕組みの時代とは異なり、ほとんどの場合スマートフォンから投票ができる仕組みです。
その問題点としてよく議論される、個人認証方式やセキュリティに関しては、別のコラム電子投票の問題点でも記述した通り、現在の公職選挙の方式より劣ることは考えられません。
ネット投票 総務省の動き
総務省では、まず海外に住む日本人を対象とする在外投票で、ネット投票のためのシステムを整備する方針で、2019年度に実証実験し、20年度以降の公職選挙法改正をめざすとしています。
実現に向けた課題は(1)本人確認をするための法整備(2)システム障害への対応(3)投票の秘密の確保などとされていますが、民間レベルの総会や選挙では、各団体の規約変更≒法整備も含め採用が進んでいます。
例えば分譲マンションでは管理規約上「書面又は電磁的方法による決議」を明記する必要がありますが、これは労働組合の規約や学術学会の会則も同じように変更する必要があり、これらの「法整備」はそれほど大きな問題ではありません。
システム障害への対応や投票の秘密の確保は、投票システムの基本要件であり、解決すべき問題というよりはシステム設計時に実現するだけの事です。
言うなれば、現在問題とされている前出の3つの問題は、民間レベルではすでに解決し、総会や選挙を運営する事務局やスマホから投票行動をする方々の双方にとって非常に便利で、信頼性が高く、高い投票率が維持される環境は出来上がっています。
民間から見たネット投票の問題点
では、総務省が言うところのネット投票の問題点は、いったい何なのでしょうか?
i-Modeの時代から、電子投票システムを構築し運営してきた「e投票」開発者にとって、電子投票は全く新しい夢の技術だとは思っていません。
個人認証を伴う電子投票システムは厳格なシステムであり、だれもがクリックできるようなWeb上のアンケートシステムではありません。
厳格なシステムを構築するためには、いたずらに最新技術を投入すべきではなく、実績のある安定的な手法のみを採用し続ける事が肝心だと考えています。
「e投票」では、だれもがお使いいただけるように設計したクラウド版と、特殊要件を組み込むカスタマイズ版があります。
クラウド版が安定的に稼働するのは当然ですが、カスタマイズ版でも、ユーザー要件を理解し、最適かつ投票システムのプロとして提案的な設計を行い、正確に構築し、多種多様なシナリオでの地道なテストを行い、信頼性を高め、ユーザビリティを向上させ、OSやブラウザ、ネットワークなど外部環境の変化に適合させ、処理速度等を監視し、問題を未然に防ぎ、さらなる完成度を求めるのみです。
この取り組みは、電子投票システム以外の一般のシステム構築と、何らの変りもありません。
問題点と考えられることも、一般のシステムと何らの変りもないという事になります。
写真は、7万人を超える大規模ユーザーテストに対応中の風景です。
7万人を超える投票から発生するトランザクションは、7万件程度ではありません。
監査証跡を含めた、厳格な投票システムに必要なあらゆる仕組みが、その裏で動いています。
それらすべてが安定的に稼働し、暗号化された膨大なデータが格納されたとき、初めて1件の投票データが作成されます。
夢のようなシステム
電子投票システムは、地道な作業の積み重ねが必要な一般的なシステムと何ら変りはありません。
そういった意味で、開発者にとってみれば夢のようなシステムではありません。
しかし、投票者にとっては、期間中いつでもどこでも投票行動が可能で便利であり、事務局側にとっては、集計作業が不要となりカウント間違いもなくなる、やはり夢のようなシステムと言えるでしょう。