最近では働き方改革がメディアで取り上げられることも多くなり、36協定や労使協定に注目が集まることも多くなりました。「36協定がなんとなく残業時間に関する話しなのは知っている」という人も少なくないことでしょう。
まずは労使協定にどんなものがあるのか、見てみましょう。
ここでは労使協定の種類と役割を、厚生労働省の定める法令に照らし合わせて5つご紹介いたします。
(前略)労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定に委ねることとした労働者については、(中略)その協定で第二号の清算期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において、同条の規定にかかわらず、一週間において同項の労働時間又は一日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。
つまりは出社時間と退勤時間を前倒しにしたり、あるいは後ろ倒しにしたりする、いわゆる「変形労働時間制」のことを指します。
たとえば「朝のほうが仕事が捗る」という人であれば7時に出社して16時に退社したり、あるいは「夜のほうが仕事がしやすい」という人であれば朝は10時に出社して夜は19時に退社するなど、柔軟な仕事の仕方が期待できます。
不妊治療中の働く女性の約9割が「治療がキャリアの支障になる」と感じていることが日本産科婦人科学会の調査でわかった。働きながら不妊治療を受けるため、フレックスタイム制など休みを自由にとりやすい仕組みを求める人が多かった。
朝日新聞デジタル / 不妊治療中の女性9割「キャリアの支障に」 学会が調査(リンク切れ)
労使協定の効果としては、人材の確保が大きく期待できます。
女性に限らず、現代においては男性による家事・育児への積極的な参加も見受けられ、ますますフレックスタイム制の効果は期待できるでしょう。
集中力が続く5時間がコアタイム。仕事のやり方が従来と同じまま労働時間を減らそうとしても、それは従業員に負担を押しつけるだけであり、あまりうまくいかない。仕事のやり方や内容そのものを見直して、労働生産性の向上を図ることが、当然だが何よりも重要
日経BizGate / 中小だからできる「勤務時間は短く、生産性は高く」(リンク切れ)
さらにフレックスタイム制の導入は生産性の向上も期待できます。人材の流動性を高めることで労働生産力を底上げすることこそ、労使協定におけるフレックスタイム制の役割と言えるでしょう。
2018 年 6 月 29 日に成立した「働き方改革関連法」に基づき 「労働時間等設定改善法」が改正され、前日の終業時刻から翌日 の始業時刻の間に一定時間の休息を確保することが事業主の 努力義務として規定されました(2019 年 4 月 1 日施行)。
断続的な長時間労働による過労死を背景として、勤務間インターバル制度は労使協定に設けられました。実際は企業に導入義務がないため、多くの企業が導入に後ろ向きです。
「導入予定はなく検討もしていない」と答えた企業は約80%にのぼった。その理由(複数回答可)を問うと「制度を知らなかった」(約19%)、「人員不足や仕事量が多く導入すると業務に支障が生じる」(約11%)などが多かった。
朝日新聞デジタル / 勤務間インターバル、導入企業4%に届かず 厚労省調査(リンク切れ)
しかし、某大手ブラック居酒屋チェーンがホワイト化を目指してこの制度を利用しているのも事実です。ブラック企業のイメージが定着してしまうと経営赤字、離職率の上昇は避けられません。
‘19年 インターバル制度導入。これまで勤務を終えて数時間後に再び出勤するケースも珍しくなかったが、’19年以降は勤務間に8時間以上インターバルを設ける制度を導入。休憩時間を確保できるようになった。
◆働き方改革とは?「労働組合は会社の敵」なんて言ってられない!
参考
働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律の一部の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令新旧対照条文
「法定福利費」とは、法律で義務づけられている社会保障制度の費用(企業負担分)をいい、「健康保険料」、「介護保険料」、「厚生年金保険料」、「労働保険料」等をいう。
「法定外福利費」とは、法律で義務づけられていない福利厚生関係の費用で、「住居に関する費用」、「医療保健に関する費用」、「食事に関する費用」、「慶弔見舞い等の費用」等をいう。
つまり、全ての福利厚生が法律で義務付けられているわけではありません。たとえば、国民健康保険であれば「国民健康保険法」という法律で義務付けられています。
しかし、社宅や社員食堂、慶弔などは法定外福利厚生のため企業の任意です。
わが国において初めてカフェテリア・プラン(従業 員の自主選択に基づく福利厚生制度)が企業に導入さ れたのは 1995 年である。導入企業はベネッセコーポ レーションである。その後,徐々にではあるが,導入 企業が増加し,民間企業のみならず,健康保険組合, 企業共済会,公共団体などにまで拡がった。
従業員のワークライフバランスを整えることを目的に、近年では特にカフェテリア・プランやパッケージサービスなどが注目を浴びています。
法定福利厚生が「いざという時の備え」を節税に利用するリスク分散が目的であれば、法定外福利厚生は「労働者に還元する」ことで働く人たちのモチベーション向上を節税に利用することが目的であると言えるでしょう。
1.使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。
2.使用者は、産後八週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後六週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。(後略)
いわゆる産休については労働基準法において、出産を控える女性であれば誰でも取得できることが明記されています。
厚生労働省 / あなたも取れる! 産休&育休(リンク切れ)
産前休業においては出産予定日の6週間前から、産後休業においては出産後6~8週間で誰でも取得できます。 しかし、育休においては誰でも取得できるわけではありません。
事業主は、労働者からの育児休業申出があったときは、当該育児休業申出を拒むことができない。ただし、当該事業主と当該労働者が雇用される事業所の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、その事業所の労働者の過半数で組織する労働組合がないときはその労働者の過半数を代表する者との書面による協定で、次に掲げる労働者のうち育児休業をすることができないものとして定められた労働者に該当する労働者からの育児休業申出があった場合は、この限りでない。(後略)
つまり、会社との労使協定の内容しだいでは育休の取得ができません。
たとえば入社してまだ1年が経過していない人、あるいは1年以内に会社を辞める人であれば育休を取得することはできないかもしれません。
今後、育休を取得する予定のある従業員は会社と交わした協定の内容を深く確認する必要があります。
男性の家事育児参加が叫ばれる時代ではありますが、労働者が節操なく休暇を取ることで企業側に混乱を生まないようにするための労使協定の存在は必要です。育休に関する労使協定は まさしく働き方を整える労使協定である、と言えるでしょう。
参考
マイナビニュース / オリックスが産休・育休中の女性社員を対象に「復職支援セミナー」を開催(リンク切れ)
「36協定と労使協定は何が違うのか?」と言った疑問を持つ人も少なくはありません。
36協定とは労働基準法第36条に由来する名称で、端的に言えば時間外労働(残業)をするために会社と労働者間で締結しなければならない労使協定のことを36協定と呼びます。
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
つまり、従業員の1人でも残業をするのであれば会社と従業員間で36協定を結ばなければなりません。
36協定を結ばずに従業員が残業をした場合、会社側に責任が問われます。残業時間を厳しく取り締まることで従業員の労災を防ぐ、そんな役割をもつ労使協定こそ36協定である、と言えるでしょう。
36協定で定める時間外労働に罰則付きの上限が設 けられることとなりました
36協定を締結したからと言って、無限に残業をさせることは当然のことですが、できません。
当たり前ではありますが、36協定の締結なしに従業員を残業させたりした場合にも罰則があります。
1.使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
2.使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。
「うちの会社に労働組合は無いよ」という場合、全従業員の過半数から代表者を選出する必要があります。
早急に対策を講じることをお勧めいたします。
- 労使協定(36協定など)の過半数代表者選出(従業員代表者選出)をネット投票で実施するならこちらから。