ソフトバンクが2017年に副業を解禁したことを切っ掛けに「働き方改革」という考え方がメディアに露出したことを、多くの人が覚えていることかと思います。
本業とは別で仕事をする、いわゆる副業、兼業、Wワークを解禁している企業はソフトバンクだけではなくYahoo!、リクルート、ロート製薬など大手の有名企業も解禁しています。
副業の形態にもフリーランス、アルバイトなど種別があり、特に副業アルバイトには少なからず法的な問題があります。
働き方を間違えると、36協定の要件に引っ掛かることもあるでしょう。
場合によっては、副業をしていたことが原因で会社に訴えられてしまう恐れもあります。
学生がアルバイトをすることと、副業でアルバイトをすることに、どんな違いがあるかご存じでしょうか?
学生であれば、8時間の法定労働時間に合わせて36協定の時間外労働で1日おおよそ11~12時間の仕事ができます。
しかし副業の場合、本業で8時間働いたあとのアルバイトは時間外労働で残業の扱いになるため36協定の要件にしたがって副業は1日3~4時間しかできません。
甲事業場で労働契約のとおりに労働した場合、甲事業場での労働時間が法定労働時間 に達しているため、それに加え乙事業場で労働する時間は、全て法定時間外労働時間 となります。
つまり、副業をせずに本業で11~12時間の仕事をしても、本業8時間から副業アルバイトで3~4時間の仕事をしても、1日の労働時間は変わりません。
給料の安い副業であれば、むしろ収入が減る可能性もあります。
厚生労働省は、副業・兼業を推進するため、これまで「複数職場の労働時間は通算する」としてきた労働基準法の規定を削除する案を盛り込んだ報告書をまとめた。これが実現すると、本業と副業を合わせて過労死ラインを超える長時間労働をさせることも可能になり、働き方改革関連法により四月から定めた残業の上限規制が骨抜きになるおそれがある。(後略)
東京新聞 / <働き方改革の死角>「副業の労働時間 合算せず」 企業の管理義務廃止案 / 2019.7.25(リンク切れ)
今年の7月には副業の労働時間を増やすことで、Wワークを推奨する法案も出てきました。
副業においても、36協定とそれに準じた労使協定の存在が重要になってきています。
従業員代表者(過半数代表者)や36協定についてはこちらも参考になります。
◆最も簡単に行える従業員代表選出方法
◆新36協定と旧36協定で何が変わる?タイムリミットはいつ?
◆今さら人には聞けない、労使協定の種類と役割、36協定とは
学生でも同じことが言えますが、度が過ぎる働き方は誰も得をしません。
副業を理由に本業を解雇される、という事案は珍しくありません。
企業によっては就業規則で副業を禁止にしているところも多いでしょう。
なぜなら、副業によって会社のノウハウが社外に流出する危険性があるからです。
あるいは、会社の品位や信用を損なったり競業によって利得を奪い取ってしまう副業もあります。
(前略)債務者が前記債権者の無断二重就職の就業規則違背行為をとらえて懲戒解雇とすべきところを通常解雇にした処置は企業秩序維持のためにやむをえないものであって妥当性を欠くものとはいいがたく、(後略)
小川建設事件の概要としては、本業の勤務時間外にキャバレーの会計係に就労していたことが問題となったようです。
多くの場合は労働契約法第16条に則れば、副業を理由に解雇することは認められません。
しかし、度が過ぎればガバナンスを理由に解雇されてしまうことも事実です。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
円満な関係で本業を続けるのであれば、会社と交渉しキッチリと了承を得た上で、なおかつ会社に損害を出さないように気を付ける必要があります。
就業規則を確認し会社に許可を取ることができたら、労働条件についても知っておくべきことがあります。
たとえば、残業によって発生する25%の割増賃金は本業と副業のどちらで発生するかはご存じですか?
甲事業場の所定労働時間は8時間であり、法定労働時間内の労働であるため、所定労 働時間労働させた場合、甲事業主に割増賃金の支払義務はありません。(中略)乙事業場では時間外労働に関する労使協定の締結・届出がなければ当該労働者を労働させることはできず、乙事業場で労働した5時間は法定時間外労働であるた め、乙事業主はその労働について、割増賃金の支払い義務を負います。
副業の内容によって決まり事が変わってきます。
たとえば、リモートワークのような働き方を採用している企業であれば労使協定の内容や賃金の形態が変わってくることもありえます。
少なくない社会経験はトラブルを回避するうえで強みです。
たとえば、賃金未払いには毅然とした対応を取らなければなりません。
学生アルバイトである塾講師の賃金を、1コマ○○円と契約し (いわゆるコマ給)、授業時間外の準備・指導記録作成の時間等 に対する賃金を支払っていなかったもの。
労働条件に詳しくない学生ほど、悪い条件で働かされてしまう恐れがあります。
しかし、本業で仕事をしている人であれば「この働き方は何かがオカシイな」と違和感に気づくこともできるでしょう。
どのような雇用形態でも、まずは36協定を結ばなくてはなりません。
さらに、選出方法には投票や挙手など、民主的な方法が取られていなければなりません。
36協定と従業員代表者(過半数代表者)についてはこちらの記事が参考になります。
◆新36協定と旧36協定で何が変わる?タイムリミットはいつ?
◆最も簡単に行える従業員代表選出方法
◆安定した総会開催と電子投票【e投票の導入メリット】
「うちの事業場は代表者を選出していないのでは?」と思い当たるようであれば、この機会に確認してみてはいかがでしょうか?
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