中小企業を対象に36協定が改正されるまで残り3ヵ月を切りまして、従業員代表者(過半数代表者)を決めるために奔走する企業も増えてきている頃かと思います。
新36協定と旧36協定で何が変わる?タイムリミットはいつ?
従業員代表の決め方には挙手、投票、労働者による話し合い、持ち回り決議など、様々な方法が存在します。
選出手続きは、労働者の過半数がその人の支持していることが明確になる民主的な手続きがとられている必要があります。
厚生労働省 / 事業主・労働者の皆さまへ
民主的な方法、少なくとも使用者(経営者や管理職)が一方的に決めるやり方でなければ従業員代表を決める方法には制限が無さそうです。
では「くじ引きやジャンケンで従業員代表者を決める」という方法は民主的な方法と言えるでしょうか?
公平に決める、という点では「くじ引きやジャンケンで従業員代表者を決める」ことは確立が平等で誰にも等しくチャンスがあります。
一見して民主的に捉えられそうですが、実際はどうでしょうか?。
民主主義の原則を見てみましょう。
Democracies conduct regular free and fair elections open to all citizens. Elections in a democracy cannot be facades that dictators or a single party hide behind, but authentic competitions for the support of the people.
Bureau of International Information Programs / Principles of Democracy
要約すると「全ての人に開かれた自由で公正な選び方をしなければならない。少数派が陰から操るようなやり方ではなく、競うように決めるべき」です。
(a single party を「一党」ではなく「少数派」として要約しました)
同様の理由から従業員代表者を経営者や管理職(少数派)が一方的に決める方法は是正されることが理解いただけることかと思います。
良くも悪くも運要素に左右されるくじ引きやジャンケンでは、少数派にとって有利な決め方と言えるでしょう。
むしろ「従業員代表者をくじ引きで決めよう」と言う意見が多数であれば問題が無いとも考えられます。
関心が少ない人ほど「簡単な方法で決めてしまいたい」と思うのも自然なことでしょう。
しかし、快く思わない人も少なくないはずです。
たとえば「くじ引きで私が選ばれたら面倒だな」という場合、それを辞退したがる人も出てくるのではないでしょうか?
何より、くじ引きで選ばれた人が信頼のおけない人であれば「あの人を従業員代表にしたくない」という不信感も湧くことかと思います。
「あの人を従業員代表にしたくない」という不信感もあれば「あの人が従業員代表を務めるべきだ」という思いはありませんか?
たとえば「私が従業員代表者に立候補します」という積極的な人がいるようであれば信任投票を行う必要があります。
全従業員の過半数を占める従業員代表者であれば36協定を締結することができます。その信任、不信任を問うことは、たとえジャンケンやくじ引きで決められた人でも例外ではないと考えられます。
実際に「くじ引きやジャンケンで36協定の従業員代表者を選出しても良いのか」ということを労働局に確認してみました。
大阪労働局 第一庁舎8F 雇用環境・均等部【総合相談コーナー】
電話: 06-7660-0072
A. ジャンケンで選出、ということは聞いたことが無い。しかし民主的な方法であれば良く、方法については法律で定めていないので「くじ引き」でも問題は無い。
A. 必ずしもしなければならない、ということではない。ただ、議事として当選した人は過半数以上の信任を得ている、という証拠があった方がトラブルは避けられる。
A. くじ引きに法的な強制力が無い以上、くじ引きで当選した人を無理やり従業員代表者に据えることはできません。くじ引きをやり直すか、別の民主的な方法で選出してください。
A. あくまで労働者同士の話し合いで選出してください。くじ引きで従業員代表者を選出する場合、使用者(経営者や管理職)が先導してくじ引きを行うことは使用者が一方的に従業員代表を選出することに同義です。
- 労使協定(36協定など)の過半数代表者選出(従業員代表者選出)をネット投票で実施するならこちらから。